教場― 映画では語られない『警察学校の現実』②元捜査一課刑事・匿名問答集

俳優、芸能人、注目、なぜ、どうして 

「君には、ここを読んでもらう」「何なら、今からでもいい」

警察学校が注目を集めているのは、前代未聞です。かと言って教場requiemは誇張された演出も多く、現実とはかけ離れています。注目を浴びている今だからこそ、事実の一端なりとも、気になる方に届けたいと思います。注目すべきは、警官人生の要とも、分岐点とも言える最初の上司で、大きく変わることがあるという点でした。


🔴ドラマ「教場」と実際の警察学校の決定的な違いは何ですか?

🔴厳しい教育を受けても不祥事が起きる理由は?

🔴警察学校での厳しい訓練の本来の目的について教えてください。

🔴交番勤務から専門部署へ進むための具体的な条件は?


🔴ドラマ「教場」と実際の警察学校の決定的な違いは何ですか?

ドラマ『教場』と実際の警察学校の決定的な違いについて、元警視庁捜査一課刑事の佐藤誠氏が自身の経験をもとに解説しています。主な違いは、教官の体制、教育の目的、そして学生たちの生活実態の3点に集約されます。
1. 教官の体制とキャラクター
  • 教官の数: ドラマでは木村拓哉さん演じる風間教官が1人で全てを仕切っているように描かれていました。のちに変わりましたが、実際には「教官(警部補)」と「助教(巡査部長)」の2人1組で1つの教場を担任します
  • 教官の人物像: ドラマの風間教官は「孤高のカリスマ」で冷徹な超人的キャラクターとして描かれていますが、現実にはあのようなカリスマ的な教官は存在しません。実際の教官は、人を教えるのが好きな、適性のある普通のお巡りさんや刑事、白バイ隊員などがローテーションで務めています
  • 専門指導: 教場の担任以外にも、武道、射撃、救急法など、それぞれの専門分野ごとに多くの教官や指導員が関わっています
2. 教育の目的と「退校届」
  • 「振るい落とし」か「引き上げ」か: ドラマでは、適性のない人間を振るい落とす「人格破壊的」な教育として描かれ、風間教官がすぐに退校届を突きつけます。しかし、現実は「自己防止的」な教育が中心です。逮捕権などの国家権力を持たせて良い最低限のラインまで学生を「引き上げる」ことが目的です
  • 退校への対応: 現代の警察組織は深刻な成り手不足に直面しているため、ドラマのように簡単に辞めさせることはありません。むしろ、辞めたいという学生がいれば「もう一度考え直せ」と引き止めるのが実態です
3. 学校生活の実態
  • 学生同士の人間関係: ドラマでは学生同士の裏切りや陰謀、心理的な追い込みが描かれますが、現実の学生にはそんなことをしている時間は全くありません。実際の生活はもっと地味で組織的であり、団体行動や規律、清掃などに追われる毎日です
  • 厳しさの質: ドラマのような心理的な追い込みよりも、むしろ「規律によるストレス」や「閉塞感」の方が、現実の厳しさとして大きいと語っています。一方で、厳しい訓練ばかりではなく、卒業旅行や運動会などの楽しい行事や、学生同士の助け合いも存在します
  • 生活環境の変化: 佐藤氏が在籍した昭和の頃(1983年入校)は8人部屋で、女性警察官の卵を見ることも禁止されるほど厳格でしたが、現在は個室が与えられ、男女共学になるなど、時代に合わせて過ごしやすく変化しています
リアルに再現されている部分
 一方で、ドラマが非常にリアルに描いている部分もあります。特に「教練(きょうれん)」と呼ばれる行進訓練や、礼式、射撃訓練などは、専門家の監修が入っているためか、非常に正確に再現されていると評価されています。よくぞここまでといえる美しさです。 総じて、ドラマ『教場』はエンターテインメントとして面白く作られていますが、現実の警察学校は、個人の人格を壊す場所ではなく、組織として統一行動が取れ、命令系統を遵守できる警察官を育成するための訓練施設であるという点が決定的な違いです

🔴厳しい教育を受けても不祥事が起きる理由は?

 警察学校で厳しい教育を受けても不祥事が起きてしまう理由について、以下の要因や背景が考えられます。
1. 教育の目的が「人格の完成」ではない
警察学校の教育は、決して学生の「人格を完成させる場所」ではありません
  • 最低限のラインへの引き上げ: 教育の本質は、一般の若者を、逮捕権や交通取り締まりなどの国家権力を持たせてよい「最低限のレベル」まで押し上げることにあります
  • 自己防止的な教育: ドラマのような人格破壊的なものではなく、あくまで不祥事や事故を未然に防ぐための「自己防止的」な教育が中心です
  • 組織としての統一: 警察学校の主な目的は、「統一行動」が取れることや、「命令系統」を徹底遵守することであり、個人の内面や道徳性を完璧に作り変えることまでは射程に入っていません
2. 起律によるストレスと閉塞感
警察学校の生活は非常に厳格な規律に縛られており、それが学生に大きな負荷を与えています。
  • 規律のストレス: 心理的な追い込みよりも、決められた通りに全員が動かなければならない「規律によるストレス」が非常に大きいとされています
  • 閉塞感: 全寮制で外部との接触が制限される中での「閉塞感」も、学生にとっては大きな精神的負担となります
3. 現場(所轄)に出てからの環境変化
警察学校を卒業し、実際に警察署(所轄)に配属された後の環境が、その後の警察官としてのあり方に大きく影響します。
  • 上司の影響: 現場に出てからは、「上司がどのような人物か」によって、その人が進む道や適性が左右されます
  • 不祥事のメカニズム: 佐藤氏は、これほど厳しい訓練を生き抜いた人間が、なぜ現場に出てから痴漢や盗撮などの不祥事を起こし「腐ってしまう」のか、そこには特有のメカニズムが存在すると指摘しています
 この「不祥事が起きる具体的なメカニズム」の核心部分については、話しにくい内容として別の場で詳しく語るとされていますが、「厳しい教育=人格の完成ではない」という構造的な限界があることが示唆されています

🔴警察学校での厳しい訓練の本来の目的について教えてください。

 警察学校での厳しい訓練には、ドラマで描かれるような「適性のない者を振り落とす」というイメージとは異なる、組織運営上の本来の目的がいくつかあります。
ソースに基づくと、その主な目的は以下の通りです。
1. 国家権力を行使できる「最低限のライン」への引き上げ
警察学校の最大の目的は、一般的な若者を、逮捕権や交通取り締まりといった国家権力を行使させてもよい「最低限のレベル」まで押し上げることにあります
  • 不祥事を起こさないための最低限の知識や倫理観を身につけさせる「自己防止的」な教育が中心です
  • これらは「人格を完成させる」ためではなく、あくまで警察官として任務を遂行できる最低ラインをクリアさせるためのものです。心のうちを変えれる訳ではありません。
2. 統一行動と命令系統の徹底
警察は組織で動くため、個人の判断よりも「組織としての統制」が重視されます。
  • 統一行動: 行進訓練(教練)などを通じて、全員が寸分違わず同じ動きができるように訓練します
  • 命令系統の遵守: 上司からの命令に絶対に従い、舞台として一体となって動ける人間を作り上げることが目的です
3. 緊急時への即応能力の育成
いつ何が起きるかわからない現場に対応するための準備です。
  • 夜中に突然招集がかかるような訓練を通じ、緊急時に即座に対応できる態勢(即応)を整える訓練を行います
4. 団体行動の精神と助け合
厳しい環境を共に過ごすことで、警察組織に不可欠な「助け合いの精神」や「団体行動の意識」を養います
  • 30kmの歩行訓練などで学生同士が助け合う場面もあり、訓練は単に厳しいだけでなく、連帯感を生む場としての側面も持っています
5. 組織への適応
 社会のどこへ行っても厳しさはありますが、特に特殊な環境である警察組織に適用できるかどうかを訓練を通じて確認し、慣れさせるという側面もあります
 総じて、警察学校の訓練は「人をいじめる」ためではなく、「組織の駒として機能し、過失や不祥事を起こさずに国家権力を適切に行使できる人間」を短期間で作り上げるための合理的なシステムであると言えます

🔴交番勤務から専門部署へ進むための具体的な条件は?

 交番勤務(卒配)から刑事、交通、公安などの専門部署へ進むための具体的な条件やプロセスは以下の通りです。

1. まずは「交番勤務」からスタートすることが絶対条件
警察学校を卒業すると、本人の希望にかかわらず、まずは全員が必ず地域の交番(処轄)に配属されます
  • 卒業してすぐに刑事や交通、公安などの専門部署に配属されることはありません
  • 警察学校内で「刑事になりたい」といった希望調査を行って配属先が決まるという仕組みも、基本的には存在しません
2. 現場の上司による「適性」の評価
専門部署へ進めるかどうかは、配属先の上司が本人の働きぶりを見て下す判断が決定的な条件となります
  • 実務での動き: 上司は部下の日常の勤務や動きを観察し、「この者は刑事に向いているか」「交通部門に適性があるか」を見極めます
  • 適性(適正)の有無: 上司からその部署への「適性があると認められることが、専門の道へ進むための実質的な条件です。もしここで適性がないと判断されれば、希望する道へ進むことは難しくなり、挫折してしまう人もいます
3. 特定の役職への推薦と「講習」の受講
教官や助教といった特定のポストを目指す場合には、以下のような条件が必要になります。
  • 上司からの声かけ: 上司から「教官(または助教)をやってみないか」と適性を見込まれて声をかけられることが出発点となります
  • 専門講習の受講: 上司の推薦を受けた上で、専門の「講習」に行き、必要な課程を修了することが条件となります。佐藤氏の例では、武道が苦手という自身の適性を鑑みて、この誘いを辞退しています
4. 実力主義と努力
警察組織は実力主義の側面が強く、専門部署への道やその後の昇進は、本人の努力次第で切り拓くことが可能です
  • 承認試験: 階級を上げていくためには試験(承認試験)を受ける必要がありますが、刑事などの現場に長くいると試験への興味が薄れることもある一方で、努力次第で署長や本部の幹部を目指すこともできる組織構造になっています。
総じて、専門部署へ進むための最大の鍵は、「現場での実務を通じて、上司にその部署への適性をめさせること」に集約されます