「君には、ここを読んでもらう」「何なら今からでもいい」
教場requiemが2月20日に公開され、大ヒットⅠ位になりました。連日の盛況で舞台である警察学校にも注目が集まり、「本当に怖い教官はいる?」「連帯責任っていつの時代だ。」「携帯禁止なの?」等々、ドラマ・映画と実際の学校との違いは気になると思います。
教場シリーズの撮影は、全て警察学校以外で行われ、明星大学 青梅校(旧校舎)、小山工業高等専門学校(栃木県小山市)など正門での入校シーン、図書室での自習、渡り廊下での会話など。現役の高専が使用されており、リアルな学校生活の空気が感じられるスポットです。
普段からなじみのない警察学校。パンフや公式では、判らない裏側や経験者の本音をお伝えできればと思います。なぜ不祥事は起きるのか、出世・進路の分岐点も分かります。
質問まとめ
🔴警察学校の生活で教官が学生を指導する真の目的とは?
🔴交番勤務から専門部署へ進むための具体的な条件は?
🔴配属先の「上司」が具体的にどう部下を評価するのか知りたい
🔴「挫折」して辞めてしまう人の主な理由は他にありますか?
🔴配属後の上司との出会いが運命を分けるのはなぜ?
🔴警察学校の生活で、教官が学生を指導する真の目的とは?
警察学校で教官が学生を指導する真の目的は、ドラマで描かれるような「適性のない者を振り落とすこと」ではなく、普通の若者を「国家権力を行使させてもよい最低限のレベル」まで引き上げ、組織の駒として機能させることにあります。
具体的には、以下の5つの重要な目的があります。
1. 国家権力を持たせるための「最低限のライン」の確保
最大の目的は、それまで「普通のあんちゃん」だった学生を、逮捕権や交通取り締まりといった強大な国家権力を与えてもよい「最低限のライン」まで押し上げることです。これは、社会的に信頼される警察官としての土台を作る教育です。
2. 「統一行動」と「命令系統」の徹底
警察は組織で動く実力組織であるため、個人の判断よりも統制が重視されます。
- 統一行動: 全員が寸分違わず同じ動き(教練など)ができるよう訓練し、組織としてのまとまりを作ります。
- 命令系統の遵守: 上からの命令に絶対に従い、部隊が一丸となって動ける人間を作り上げることが目的です。
3. 「自己防止的」な教育
ドラマ『教場』では「人格破壊的」な教育として描かれていますが、現実は「自己防止的(不祥事や事故を未然に防ぐ)」な教育が中心です。これは、現場に出てから自分自身が過失や不祥事を起こして身を滅ぼさないようにするための、いわば「守り」の教育です。
4. 緊急時への「即応能力」の育成
いつ何が起きるかわからない現場に対応するため、精神的・肉体的な準備を整えさせます。夜中に突然招集がかかるような訓練を通じ、緊急時に即座に対応できる態勢(即応)を作り上げます。
5. 組織への適応と団体行動の精神
警察という特殊な組織に適用できるよう訓練し、全寮制での共同生活や30km歩行訓練などの厳しい環境を共に過ごすことで、警察官に不可欠な「助け合いの精神」や「団体行動の意識」を養います。
教官は学生をいじめたり、追い詰めたりするために指導しているのではなく、あくまで「不祥事を起こさないレベルまで引き上げ、組織の一員として卒業させること」を最終的な目的としています。
🔴交番勤務から専門部署へ進むための具体的な条件は?
交番勤務(卒配)から刑事、交通、公安などの専門部署へ進むための具体的な条件やプロセスは以下の通りです。
1. まずは「交番勤務」からスタートすることが絶対条件
警察学校を卒業すると、本人の希望にかかわらず、まずは全員が必ず地域の交番(所轄)に配属されます。
- 卒業してすぐに刑事や交通、公安などの専門部署に配属されることはありません。
- 警察学校内で「刑事になりたい」といった希望調査を行って配属先が決まるという仕組みも、基本的には存在しません。
2. 現場の上司による「適性」の評価
専門部署へ進めるかどうかは、配属先の上司が本人の働きぶりを見て下す判断が決定的な条件となります。
- 実務での動き: 上司は部下の日常の勤務や動きを観察し、「この者は刑事に向いているか」「交通部門に適性があるか」を見極めます。
- 適性(適正)の有無: 上司からその部署への「適性がある」と認められることが、専門の道へ進むための実質的な条件です。もしここで適性がないと判断されれば、希望する道へ進むことは難しくなり、挫折してしまう人もいます。
3. 特定の役職への推薦と「講習」の受講
教官や助教といった特定のポストを目指す場合には、以下のような条件が必要になります。
- 上司からの声かけ: 上司から「教官(または助教)をやってみないか」と適性を見込まれて声をかけられることが出発点となります。
- 専門講習の受講: 上司の推薦を受けた上で、専門の「講習」に行き、必要な課程を修了することが条件となります。例では、武道が苦手という自身の適性を鑑みて、この誘いを辞退しています。
4. 実力主義と努力
警察組織は実力主義の側面が強く、専門部署への道やその後の昇進は、本人の努力次第で切り拓くことが可能です。
- 昇任試験: 階級を上げていくためには試験(昇任試験)を受ける必要がありますが、刑事などの現場に長くいると試験への興味が薄れることもある一方で、努力次第で署長や本部の幹部を目指すこともできる組織構造になっています。
総じて、専門部署へ進むための最大の鍵は、「現場での実務を通じて、上司にその部署への適性を認めさせること」に集約されます。
🔴「挫折」して辞めてしまう人の主な理由は何ですか?
警察学校での訓練中、および卒業後に現場へ出てから「挫折」して辞めてしまう主な理由には、これまでに挙げたもの以外にも以下のような具体的な要因が指摘されています。
1. 警察学校内での主な退職理由(約1割が該当)
1クラス35名ほどのうち、大体1割程度は学校を辞めてしまいますが、その理由は多岐にわたります。
- メンタル面: 厳しい規律や共同生活による精神的な負担。
- 体力・病気: 体力的な限界や、病気による健康上の理由。
- 家庭の事情: 個人的な家庭の都合。
2. 警察実務の過酷な現実への直面
訓練の一環や実務の中で、避けられない過酷な現実に耐えられず辞めてしまうケースがあります。
- ご遺体の写真への拒絶感: ドキュメンタリー番組の例として、授業でご遺体の写真をいくつも見せられたことが苦痛で、1ヶ月で「やはり辞めます」となってしまう学生もいることが紹介されています。その方は引き止められ、無事に卒業されたそうです。
- 死への遭遇: 警察官の仕事は、事件・事故、自死など、人の「死」に遭遇することが避けられないため、そのメンタルを養う過程で挫折する人がいます。
- 将来への不安: 現場に出てからの夜勤や、肉体労働といった現実を知り、挫折してしまうケースもあります。
3. 希望と「適性判断」のギャップ(卒業後)
卒業後の「挫折」において大きな要因となるのが、現場の上司による評価です。
- 「ふるい」にかけられた感覚: 刑事や白バイ隊員になりたいという希望を持っていても、配属先の交番で上司から「適性がない」と判断されると、将来の道が閉ざされたと感じて挫折してしまうことがあります。
4. 組織に対する不信感
現代特有の理由として、組織そのものへの失望が挙げられています。
- 「筋が通らない」組織への反感: 昨今の不祥事の多発を見て、若い世代が警察を「筋が通らない組織」と感じてしまうことが、成り手不足や辞退(警視庁では合格者の4割が辞退)、早期退職の要因になっています。
- スマホ制限などの閉塞感: 現代の若者にとってスマートフォンの自由な使用が制限されることは「地獄」のようなストレスであり、これに耐えられないことも大きな要因の一つと推測されています。
このように、単なる訓練の厳しさだけでなく、「実務に伴う精神的ショック」「希望するキャリアへの道が閉ざされる挫折感」「組織の不祥事に対する不信感」などが、辞めていく人々の背景にあると言えます。
🔴配属後の上司との出会いが運命を分けるのはなぜ?
配属先(所轄)で最初に出会う上司が「警察官としての運命を分ける」と言われる理由は、主に「将来の専門キャリアの決定」と「組織人としての倫理観の形成」という2つの大きな側面があるためです。
具体的には、以下の理由から上司との出会いが極めて重要視されています。
1. 進むべき「道」を上司が決定する
警察学校を卒業すると全員がまず交番勤務(卒配)に就きますが、その後のキャリアパスは学校の成績や、本人の希望だけで決まるわけではありません。
- 適性の見極め: 現場の上司は、部下の日々の「動き」を細かく観察し、その者が「刑事に向いているか」「交通や公安に適性があるか」を判断します。
- 推薦と講習: 上司が適性ありと認めた場合、専門の「講習」に行くよう勧められ、そこから各専門部署への道が開かれます。
- 挫折のリスク: もし本人の希望と上司の評価が食い違い、希望の道に進めず「ふるいにかけられた」と感じると、それが将来的な挫折の原因になることもあります。
2. 「腐ってしまう」のを防ぐ導き手となる
厳しい警察学校を卒業しても、現場に出てから不祥事を起こしたり、やる気を失って「腐ってしまう」警察官が現実には存在します。
- 不信感の払拭: 昨今は不祥事の多発により、組織に対して「筋が通らない」と不信感を抱く若手も少なくありません。
- 正義感の継承: そこで最初に出会う上司が正義感に溢れた姿勢を見せ、適切に是正・指導できるかどうかが、部下が警察官としての誇りを持ち続けられるか、あるいは組織に失望して辞めてしまうかの分かれ目となります。
3. 個々の特性に応じた配置
能力の高さだけでなく、性格的な向き不向きを上司がどう捉えるかも運命を左右します。
- 例えば「人を教えるのが好き」という適性を上司が見抜けば、教官や助教への道を提示されることもあります。
- このように、上司が部下を「組織のどの駒として活かすか」を正しく見極めることが、その警察官の人生に決定的な影響を与えます。
結論として、最初の上司は単なる管理者ではなく、新人が「どのようなプロフェッショナルとして育ち、いかに高い志を維持できるか」を決定づける、キャリアの羅針盤のような役割を担っているのです。
入学試験に合格すれば、晴れて公務員です。給料をもらいながら、教練や座学を学べる道が約束されます。しかし、合格者の四割が辞退します。今年は教場requiemの上映もあり、現実には「君には、ここを辞めてもらう」タイプの教官はいないので、ご安心ください。