キングオブコント2019の感想、面白いと思ったのは空気階段、GAG、ゾフィー
キングオブコント2019の決勝戦視聴後の、ざっくりとした感想メモ。
まず、キングオブコント2019の結果は、優勝がどぶろっく、2位がうるとらブギーズ、3位がジャルジャルだった。
特に、どぶろっくの「大きな一物をください」という大胆な下ネタは賛否分かれた模様で、どちらかと言うと個人的には否の側。
別につまらないというわけではなく、ファーストステージでは普通に笑った(ファイナルステージも被せたのは笑えなかった)。
ただ、こういうタイプの下ネタや歌ネタは、わざわざ「キングオブコント」の優勝にしなくてもいいのではないか、というのが正直な感想だ。
漫才王者を決めるM-1と、コント王者を決めるキングオブコントは、あくまで正統派の存在としてチャンピオンを選んでほしい、と思う。
正統派から逸れるものの光るネタを披露する芸人は、たとえ順位は低かったとしても、テレ東のバラエティ番組やYouTubeなどで脚光を浴びる。
そんな風に、ある程度役割が分業されているほうが、長い目で見たときにお笑い全体の底上げに繋がる気がする。
2位のうるとらブギーズは、ネタの最初は面白いと思ったものの、徐々に聴いているのが辛くなってきた。
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これはネタの質云々とは別に、声があとから追いかけてくる、というのをずっと聴いていると、だんだんパラレルワールドに入り込んだみたいで気持ちが悪くなってきてしまったのだ。
ネタ自体としても一本調子だった。ファーストステージのトップバッターにもかかわらず高得点を叩き出し、正直しょっぱなで審査員と自分の感覚の乖離を突きつけられた気がした。
一方、ファイナルステージのサッカー解説のネタは一本目よりも面白いと思う(ただ、同じサッカーの解説ネタだと、ラバーガールの日本vsサウジアラビアのネタが昔から好きだったこともあり、どうしてもラバーガールのネタと比較してしまった)。
ジャルジャルは、いつも通りのジャルジャル。完成度の高いネタで、漫才でもコントでもちゃんとジャルジャル。
爆笑はしないものの、安心して笑える。
一方、個人的な好みとして、ジャルジャルの場合、ネタに「深み」や「斬新さ」を盛り込もうとしている姿勢が垣間見えることが、少し見ていて邪魔に思ってしまうのがマイナス面として働いた。
総じて、このキングオブコント2019は、ネタが散漫だったこともあってか、メッセージ過剰だった影響か、後半で、お客さんも審査員も、そして自分自身も疲れてしまったような気がする。
だから、ファイナルステージは、全体的に尻すぼみで、どぶろっくの爆発力で、競馬で言うと「逃げ切った」という印象が強い大会だった(どぶろっくが自分の姿勢を最後まで崩さなかったのは感動した)。
僕が面白いと思ったのは、空気階段、GAG、ゾフィーの三組。それぞれ順位は空気階段9位、GAG4位、ゾフィー5位だった。
空気階段は、勘違いするタクシー運転手(鈴木もぐら)と乗客(水川かたまり)のすれ違い風のコント。
設定も、一つの物語としてまとまっていたし、運転手のシュールなキャラクターを殺さずにしっかり水川かたまりが受けていたので、世界観として安定感があった。
あくまで空気階段の世界があり、その世界のなかで役割を勤めながらツッコミが入るので、ツッコミのたびに世界が壊れる、ということもなくよかった。
このちゃんとした世界をつくり、保ってくれる、というのが、自分がコントという笑いのスタイルに求めるものなのかもしれない。
GAGも、演劇性の高いネタが面白いトリオで、今回のネタは、女性芸人と新しい相方、そして芸人の彼氏の三人の設定で、芸人のコンビが彼氏にネタ披露をするもの。
そのネタが、「ブスいじり」に終始徹底し、彼氏が異議申し立てのようなツッコミをする、というコントだった。
多少風刺や社会性も匂わせながら、全く押し付けがましくなく、自然体だった。
ただ、普段はもっと福井が低音ボイスを効かせた内心の本音を語るシーンが多いものの、今回のキングオブコントではちょっとそのコントラストが弱かったのが残念だった。
ゾフィーが披露した腹話術師の不倫会見、というネタは、確かに審査員の指摘にもあったように「カメラワーク」にも助けられていたし、腹話術の人形「ふくちゃん」の表情も絶妙だった。
カメラワークとふくちゃんとのコンビネーションがよく、なにより腹話術師のふくちゃんの扱いのうまさが際立った(ちなみに、ふくちゃんはメルカリで7万円だったとのこと)。
昨今の不倫会見を皮肉ったネタでもあり、多少緊張感が会場に走ったようにも思えた。後半の失速がもったいなかった。
かが屋は注目の若手だが、日常の観察力を活かしたふふっと言う「おかしみ」が魅力なので、爆発力が求められるキングオブコントのような大会には、もしかしたら向いていないのかもしれない。
令和最初のキングオブコント2019で、優勝がどぶろっくであることによって、コントのチャンピオンを目指している若手に、今後若干の迷いが生じてくるような気もした。
M-1には、なんだかんだで「漫才」とはこういうものだ、こうあってほしい、という願いが、ときに保守的と思われても存在しているように思う。
しかし、キングオブコントは、まだまだその辺りが定まっていないのかもしれない。審査員に新風を入れてほしいなとも思った。