M-1でナイツ塙が霜降り明星を選んだ理由
2018年に開催されたM-1グランプリの決勝。
最終決戦に残った芸人は、ジャルジャルと和牛、そして霜降り明星という3組のお笑いコンビ。
最終決戦のトップバッターはジャルジャル。
漫才冒頭、「ジャルジャルで〜す!」と親指を立てて自分を指差す自己紹介の取り合い、というジャルジャルらしい発想力に飛んだネタを披露。
審査員の上沼恵美子、松本人志が笑っている様子がワイプに映る。
二番手は和牛。
親がオレオレ詐欺に引っかかったら心配だから、予行練習をする、というネタ。ボケの水田が、ツッコミの川西扮する母親に、息子本人が「俺」と電話し、お金を持ってきてほしいと頼む。
慌てて持ってきた母親に、「駄目やんか」と指摘する。シュールで演技力が問われるコント漫才。
そして、最後の一組が、若手コンビの霜降り明星。
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霜降り明星は、小学校の思い出を題材にしたネタを披露。次々繰り出されるせいやのボケに、テンポよく粗品のツッコミが響き、観覧客の笑いも最高潮に達する。
発想力に富んでいたジャルジャル、技術や漫才の構成が素晴らしかった和牛。
しかし、結果的に優勝したのは霜降り明星。M-1史上最年少の優勝だった。
最終決戦の審査では、審査員のうち霜降り明星に入れたのが、オール巨人、中川家礼二、ナイツ塙、立川志らく。
サンドウィッチマン富沢、松本人志、上沼恵美子は和牛に投票し、わずか一票差という僅差で霜降り明星が優勝した。
時間の関係上、M-1の番組内では、それぞれの審査員の投票先の理由などは聞くことができなかった。
ナイツの塙は、その後に出版された著書『言い訳〜関東芸人はなぜM-1で勝てないのか〜』のなかで、霜降り明星を選んだ理由について、彼らには「強さ」があった、と解説している。
霜降り明星には、上手い下手では語れない、芸人としての「強さ」がありました。
強さ。
非常に曖昧な表現で恐縮なのですが、芸人を見ていると、そうとしか表現しようのない何かを感じることがあります。
出典 : 塙宣之(ナイツ)『言い訳〜関東芸人はなぜM-1で勝てないのか』
霜降り明星には、芸人としての「強さ」があった。ナイツ塙は、この「強さ」にこだわっていると言う。
なぜかと言うと、その「強さ」が、自分にはないものだから。欲しくてたまらず、しかし、きっと未来永劫手に入れることができない。だから、敏感に感じ取ってしまうのかもしれない、と綴っている。
M-1の決勝、ファーストラウンドの霜降り明星のネタも、ナイツ塙は、審査員のなかで最高得点の98点を出している。
このときのコメントでも、「同じ芸人として、面白い面白くないではなく、強弱で言えば強い。圧倒的に強い人間がやっているなと。吉本の宝だと思います」と高く評価している。
別番組では、ナイツの土屋も、同じツッコミとして、粗品のツッコミを「発明」と称している。
土屋伸之(ナイツ)は「あのツッコミは発明ですね。漫画の吹き出しみたいに見ている人にわかりやすく、面白いツッコミ」、博多大吉は「粗品くんが同期なら、芸人をやめている」とべた褒めで、「ノンスタの石田くんがラジオで、霜降りはフリップ芸の進化版だと言ってた。前を向いて粗品がツッコんで、せいやは動くフリップ、これは新しい演芸なんですね」と考察していた。